当科について

ご挨拶

平成14(2002)年6月に第3代島根大学医学部(旧島根医科大学)整形外科学教授に就任し、爾来、当教室を主宰しております内尾祐司でございます。故 廣谷速人名誉教授、越智光夫前教授が築いてこられた本教室をさらに発展すべく精進して参る所存でございます。何卒よろしくお願いいたします。

さて、整形外科が対象とする運動器とは、身体の動きを、自分の思い通りにできるようにした仕組みで、骨・関節・筋肉・じん帯、腱、神経などの器官が含まれます。対象とする病気には、これらのけが、加齢変化、骨粗鬆症、スポーツ傷害、交通事故、労働災害、腫瘍などの外傷や疾患があり、患者さんの年齢は乳幼児、学生、成人、高齢者にわたり、部位も首から腰、肩、肘、手、股、膝、足など多岐にわたります。運動器は動物を動物ならしめる所以であり、長い進化の歴史の中で高度に発達させた器官です。大局的に見ますと、人類は二本足で歩行し、両手が自由となり様々な道具を作ることが可能となったからこそ、今の繁栄があるといっても過言ではないと思います。その意味では、運動器は文明・文化の発達の源であるといえます。

一方、個のレベルで運動器の意義を捉えれば、運動器は自己を表現する手段であり、人の精神性と密接に関連しているともいえます。脳はヒトのアイデンディテイ 「自分が自分であること」を形成するものですが、脳がそれを表現することはできません。 表現を可能にするためには運動器がなければなりません。また、コミュニケーションにおいては言葉を話すこと、文字を書くことも運動器を介して行われますが、言葉によらない表現、すなわち、表情・動作・しぐさなどによる非言語的表現もコミュニケーションの大きな要素で、運動器を介して行われます。

不幸にして、疾病や事故によって運動器の機能を障害された方々がいます。しかし、残された運動器を一所懸命に用いてそれぞれの競技や芸術を究めようとする彼らの姿に感動しない人はいないと思います。まさに自己を表現し、自己の精神性と自己の存在・尊厳を保持しているのだと思います。また、修練された匠の技だけでなく市井の人々の日常生活の丹念な仕事ぶりに頭のさがらない人はいないと思います。

1歳のとき熱病によって聴覚と視覚を失ったヘレン・ケラーは、6歳と10か月のある日、アニー・サリバン女史によって汲み出されるポンプから彼女の手に当たり指の間に流れ落ちる水から、「水 Water」という言葉の存在だけでなく、運動器によって時空の存在を認識することになります。その後、彼女は刻苦勉励の末、ハーバード大学を卒業した後、世界中に社会福祉の必要性を説いて回ります。そして、戦後間もない日本にも来日し講演して回り、昭和24(1949)年日本初の身体障害者福祉法の制定に貢献するのでした。まさに、運動器を介して人は世界を知り、世界に意味を与えることで意味のある人生を全うすることができるのです。運動器外傷や疾患によって運動器の機能が障害され、日常生活動作がままならなくなって生活の質(Quality of Life)が低下した方々に対して、運動器の機能快復によってQOLを向上させ、ひいては人々の意味のある人生に少しでも貢献できるように、私たち整形外科医は日々精進しなければなりません。

私に課せられた使命のひとつは人間性が豊かで思いやりがあり、人類の福祉に貢献できるような医学・医療を拓くことのできる医療人を育成することにあると考えます。そのためにはいかなる努力も惜しまぬ決意でございます。激動する社会にあっても、いつまでも変わらぬ温かい心を持ち、病める人々へ常に最善・最良の医学・医療を提供することによって、地域社会に貢献したいと考えております。今後とも皆様のご支援、ご鞭撻ならびに温かい励ましを賜りますよう、こころよりお願い申しあげます。

 

令和5(2023)年6月

  島根大学医学部整形外科学講座
教授 内尾 祐司

教室の歴史

1979年(昭和54年)
整形外科学教室開講
1979年(昭和54年)
初代 廣谷速人教授
1987年(昭和62年)
第69回中部日本整形外科災害外科学会 主催(松江市)
第20回中国・四国整形外科学会 主催(出雲市)
1991年(平成3年)
第6回日本整形外科学会基礎学術集会 主催(京都市)
1995年(平成7年)
第2代 越智光夫教授
1997年(平成9年)
第30回中国・四国整形外科学会 主催(出雲市)
2000年(平成12年)
第18回関節鏡セミナー 主催(広島市)
2001年(平成13年)
第26回日本関節鏡学会 主催(東京都)
2002年(平成14年)
第14回関西関節鏡・膝研究会 主催(大阪)
2002年(平成14年)
第3代 内尾祐司教授
2003年(平成15年)
第15回関西関節鏡・膝研究会 主催(大阪)
2006年(平成18年)
第39回中国・四国整形外科学会 主催(松江市)
2017年(平成29年)
第50回中国・四国整形外科学会 主催(松江市)
2019年(平成31年)
第30回関西関節鏡・膝研究会 主催(大阪)
第11回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 主催 (札幌市)
2020年(令和2年)
第37回中部手外科研究会 主催(出雲市)
第135回中部日本整形外科災害外科学会 主催 (Web開催)