診療情報

腫瘍

講師 山上 信生

腫瘍グループでは、四肢の原発性骨軟部腫瘍や転移性骨腫瘍を担当しています。

1. 原発性骨腫瘍

代表的な原発性骨腫瘍としては、10歳代に発症しやすい骨肉腫が挙げられます。膝の周囲に発生することが多く、けがをしていないのに痛みや腫れが出現し、長引いているという症状が多いです。発生率は、人口100万人当たり2~3人であり、がんなどに比べれば、非常にまれな腫瘍といえます。1970年代までは5年生存率が15~20%と最も予後の悪い腫瘍の1つでしたが、化学療法(抗がん剤治療)の進歩により現在は、80%にまで向上しています。生検(組織の一部を採取し、顕微鏡で見る検査)で診断が確定すれば、画像検査で腫瘍の広がりや転移があるかどうかを確認します。治療はまず術前に化学療法を行い、その後手術を行います。手術は腫瘍切除と切除後の再建です。再建には人工関節置換術を行うことが多いです。そして術後も化学療法を行います。化学療法は、日本の骨肉腫に対する標準的プロトコールに従って行っています。他科との連携をとりチーム医療を行っており、手術は整形外科で行い、化学療法は抗がん剤に詳しい小児科や腫瘍科で行っています。

2. 転移性骨腫瘍

がんの骨転移とはもとの臓器(原発巣)で発生したがんが、主に血液に乗って骨にたどり着き増殖することをいいます。骨転移の治療は、薬物療法、放射線治療、手術療法、装具療法などがあり、主に整形外科が担当するのは手術療法と装具療法です。四肢(うでやあし)の骨への転移で、手術が必要となるのは、骨が折れそうな状態(切迫骨折)やすでに骨折している場合です。手術の効果を高めるためには、早めにもとのがんの主治医と整形外科医が相談し、適切な時期(切迫骨折の時期)に適切な手術を行うことが必要です。これにより、骨折や完全麻痺など、QOLを大きく低下させる状態を未然に防ぐことができます。